先日ネットで買った商品の色が、ウェブサイトにある写真とかなり違っていて残念な思いをしました。インターネットショッピングが当たり前になった今でも写真の色管理が不十分なショップに出会うことがあります。
ユーザーとしてはガッカリしますし、あまりひどいとクレームを入れたくなります。ショップ運営者としては返品対応や信用の失墜につながります。正しい商品情報を掲載することで、ショップの信頼度と顧客満足度の向上を図りたいものです。
実物との差ができるだけ少ない「正しい色の写真」を掲載するノウハウをご紹介いたします。
写真の色を正しく管理するための理想的な環境
まず結論から言うと、写真の色を正しく管理するには王道があり、カラーマネージメント・モニター(カラーマネージメント・ディスプレイ)を使用し、キャリブレーション(モニターの調整)を行うことで正しい色の管理ができます。
カラーマネージメントモニターの中でも事実上の世界標準になってるのがEIZO ColorEdgeシリーズのモニターで、写真・映像・出版・印刷、さらにはWEBでもプロフェッショナルワークでは、EIZO ColorEdgeシリーズのモニターが使用されます。もちろん弊社でも写真のRAW現像やデザインワークには、EIZO ColorEdgeシリーズのモニターを使用しています。
もっと身近な機器を教えて!
EIZO ColorEdgeシリーズのモニターは色管理の王道ではありますが、10万円を超える高価なものです。ECサイト・ホームページ・ブログ・SNSに写真を掲載するため、モニターに10万円以上かけるのはなかなか難しいでしょう。さらにはキャリブレーションという調整作業が必要になるので、費用面以外でもちょっと敷居が高めです。
そこで、正しい色の管理(カラーマネージメント)とまではいかなくても、身近な機器のモニターで写真がそれなりに正しい色かどうかを確認する方法をご紹介します。
前置きが長いので、結論だけを読みたい方はこちら、じっくり読みたい方はそのまま読み進めてください。
正しい色とは? 〜 色温度6500K ~
同じ洋服でもお昼に見るのと夕方に見るのとでは全く違います。同じ白いワンピースでも、蛍光灯の下で見るのと、シャンデリア電球の下で見るのとでは、まったく違った色に見えます。
このようにモノの色は周辺の光に大きく影響されます。そこで、先人が「自然昼光」を色を判断するときの基準と決めました。自然昼光のもと白に見えるならその洋服は白、赤に見えるなら赤といったように。
この自然昼光に相当するのが、6500Kという色温度で、色を判断するときの国際標準となっています。
9300Kという日本特有の基準
6500Kが正しい色管理の国際標準とされています。海外ではテレビからPCモニターまで6500K(または前後の色温度)が基準として採用されています。
そのため、あらゆるモニター・ディスプレイを6500Kに設定して出荷すればOKと思いますが、日本には9300Kという高い色温度を基準にする慣習があります。
諸説あるようですが、「1975年に実験を行った結果、日本人が一番好む色温度の基準が9300Kだったため、テレビの基準を9300Kにした」とか。
参考:http://d.hatena.ne.jp/kei_kei/20071201/1196478693
「昔の日本人は馬鹿だな〜」と思うかもしれませんが、プリクラ・写真加工アプリと脈々と受け継がれています。
そう、日本人は少しだけ色白で見えていたいのです!
9300Kという色温度を基準にすると、実際の色より青白くスッキリした色になります。「素顔・すっぴん」ではなく「化粧をした状態」を基準にしたのですね。
■参考:様々な色温度基準
日本の出版/印刷のDTP: 5000K
PCの一般用途やsRGB規格:6500K
アメリカのテレビ: 6500K
日本のテレビ:9300K
WindowsノートPC, Android … 危険なモニター
さて、ここからは写真の正確な色をチェックしたいときには、できれば避けたいちょっと危険なモニター(ディスプレイ)を。
TVモニター
テレビで写真やECサイト管理作業をする方は少ないと思いますが、TVモニターは正しい色の確認には全く向いていません。
上の豆知識のように日本のテレビは9300Kという高い色温度を基準にしています。国際標準の6500Kと比べると、同じ映像・写真でもかなり青白く見えてしまいます。
さらに、色温度だけでなく、テレビは「売り場で綺麗に見えること」が何より大切で、TVモニターは鮮やかな発色をするように製造メーカー側で意図的に調整・工夫されています。
論より証拠、家電量販店のテレビコーナーにいけば一目瞭然です。メーカーや機種により発色がまったく異なり、どれが正しい色か判断できないでしょう。
Windowsのノートパソコン
正しい色を確認するのに最も厄介なのが、Windowsノートパソコンのモニターです。(先に言うとWindows自体には何も問題はありません)
言うまでもなくWindows PCは世界中のありとあらゆるユーザーに使用されています。製造メーカーも非常に多く、3万円以下の超格安PCを売りにするメーカー・機種も多くあり、モニターの品質に非常に大きな差があり、色の表示性能も機種によりけりです。
そのため、手元のWindowsノートPCで写真を正しい色に加工・調整したつもりでも、別のパソコンで見ると全く違う色になっていることが珍しくありません。
そして、もうひとつ問題があります。
「日本人好みの色温度は9300K、もっと身近なディスプレイのテレビも9300K」なのです!
メーカー側も当然わかっているので、Windows PCは工業出荷時にモニターの色温度を9300K前後に設定するモデルがとても多く、「実物に近い色」ではなく「綺麗に見える色」になるよう調整されているのです。
ECサイト・ショップの写真には、実物に忠実な色が重要なため、WindowsノートPCのモニタで写真の調整や確認を行うのはあまりおすすめできません。
Android ケータイ・タブレット
メーカーや機種によりモニターの品質差が非常に大きいため、正しい色の確認には適しません。
答えはiPhone!
さて、ようやく本題です。
EIZOのカラーマネージメント・モニターが理想ですが、10万円はなかなか出せない。そんなときに身近な機器で写真の色確認に便利なのがiPhoneです。
iPhoneはご存知のようにApple社のみしか製造しておらず、6/6S/6S Plus … のように機種も限られています。Androidのように何千という機種による品質差はありません。(もちろん、iPhoneでもモデルや実際に部品を製造したメーカー、使用状態による差はありますが…それを言い出すとキリがありません)
iPhone6の色温度は、7300K前後とやや高めですが、9300Kのように極端に高くはありません。また、表現できる再現できる色の範囲も抜群で、iPhone5以降はsRGB100%対応となっています。(きたるiPhone7 でも性能は維持または向上するでしょう)
実際にEIZOのカラーマネージメントモニターで見たときとの差も小さく、モバイル機器ながら非常に優秀です。
WindowsノートPCで加工してアップロードしたくなりますが、ちょっと一手間。
ECサイトで使う写真はiPhoneで事前にチェックするだけで、「届いたら全然色が違った」というクレームも減り、ショップの信頼度もぐっと増すでしょう。
身近な機器ということでiPhoneをあげましたが、どうしても画面が小さいという場合には最新のiPadでもOKです。
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